相続税は、全相続案件のうち約5%しか課税対象にならないといわれています。
つまり、100人の方が亡くなったとするとそのうち5人の方だけ(その遺族の方々)が相続税を支払っていることになります。比率は意外に少ないのですが、このような方々はかなりの資産家です。そこで、このような資産家の方々のご相談を受けることで、ビジネスチャンスが生まれてきます。
私が行っているのは、財産評価基本通達に基づく、いわゆる税務上の評価額に対して、不動産鑑定評価による鑑定評価額を対抗させて、相続税を軽減するというものです。なお、税法上はやはり財産評価基本通達に基づいて算定される贈与税についても同じスタンスで軽減できますので、相続時精算課税制度による贈与に当たっても活用できます。
(注)以下の文章では、平易な表現を心がけたため、専門的な厳密性にはやや欠ける場合がありますので、ご了承ください。
そもそも、相続税はなぜ課税されるのでしょうか。一般に、相続税の課税根拠としては、次の理由が挙げられています。
@不労所得(財産の偶然な取得)に対する所得税の一種と考え、担税力の発生に着目して課税します。
A富の集中を抑制する必要性があり、財産の一部を国家が徴収して社会へ還元する目的で課税します。
こうした理由から、相続税は所得税の補完税ともいわれています。
相続開始前に被相続人が財産を処分したとすれば、その時点において所得税が課税されますが(もちろん、譲渡益が発生することが前提です)、生涯売却しなければ、税務当局としては、これに関する課税機会を逸することになります。このため、相続税には、相続開始時点で、被相続人が蓄積した財産を最終的に精算することにより、富の集中を抑制する目的があるわけです(しかし、この説によると、生前に売却して譲渡益税を課税され、入手した現金に再び相続税を課税されるならば、二重課税になると思いますが)。
従って、相続税の評価は処分を前提とすることになります。そうであるならば、理論的には、相続税における財産評価は「売れる価格」で評価すべきです。
これが、私が不動産鑑定評価による相続税軽減を行う場合の基本的な考え方です。いかに、財産評価基本通達によった価格といえども、自由な公開市場で売れない、市場実勢と乖離した価格であれば、そのような評価額で申告すべきではないと考えます。
一般に、相続税の申告に当たって、財産評価基本通達による申告しか認められないという認識が浸透しているようですが、これは誤った思い込みです。
そもそも、憲法第84条に謳われているとおり、課税は法律に基づいてなされる(租税法律主義)わけですから、基本に立ち返って、相続税法の条文を参照してみましょう。
@相続税法第22条
「相続、遺贈または贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による。」
この条文によると、単に「時価」とだけ規定されており、「時価」により申告すれば、それで足りることになります。
それでは、「時価」とは何でしょうか。
A相続税法における「時価」とは
財産評価基本通達(土地関係)1−(2)(時価の意義)では、時価とは、
「課税時期(相続等により財産を取得した日)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」をいい、「その価額は、この通達の定めによって評価した価額による」と規定されています。
前段については、「客観的な交換価値」を意味しており、自由な公開市場において、売急ぎ・買進み等の特別な動機によらないで売買が成立するであろう価格です。従って、「売却可能な価格」を意味するはずです。
後段については、一見、財産評価基本通達による評価を強制したもののように解釈できます。しかし、そもそも、役所の通達とは、上級庁が下級庁に対して内部的な拘束力を持つものではあっても、法的には民間人(この場合は納税者)に対する拘束力はありません。
事実、私がこれまでに不動産鑑定評価書を添付した相続税申告について、「財産評価基本通達に基づいていないこと」を理由に、当局に否認されたケースは皆無です。
もともと、財産評価基本通達は「課税の公平」及び「納税者の便宜」を目的としたものです。しかし、「課税の公平」については、画一的な評価基準によって悪い物件まで高く評価される嫌いがあります。また、「納税者の便宜」のためということであれば、納税者が自らの労力で「時価」を疎明できれば、当然、財産評価基本通達による必要はありません。
一般的には、対象不動産の所在する地元の不動産業者さんに「時価」をお尋ねになることが多いでしょう。経験豊富な業者さんは地元相場に通暁し、売れる価格をほぼ的確に提示してくれると思います。しかし、残念ながら、「おおよそ坪****万円」とか、「総額****万円でないと売れない」という意見は、そのまま税務署にぶつけても通りづらいのです。
そこで、相続税法上の「時価」に関する疎明資料として、不動産の価格に関する国家資格である不動産鑑定士による不動産鑑定評価書の利用価値が生ずるわけです。
Bすべての事情を考慮
財産評価基本通達(土地関係)(3)財産の評価))では、「財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する」としています。
しかし、財産評価基本通達は本当に「すべての事情を考慮」しているのでしょうか?
この点については後述したいと思います。
財産評価基本通達では、宅地の評価方式として、次の2つを規定しています。
T. 路線価方式・・・市街地的形態を形成する地域に適用します。
U. 倍率方式・・・その他の地域に適用するもので、固定資産税評価額に、定められた一定
の倍率を乗じて、相続税評価額とする方式です。
実務上、倍率方式は、市街化調整区域や都市計画区域外のような、もともと地価の低い地域における評価方法であるため、不動産鑑定評価によって評価額を下げるというメリットはあまりありません。従って、以下は路線価方式について話を進めたいと思います。
@相続税路線価とは何か
路線価とは、「ほぼ同価額と認められる一連の宅地が面している路線の中央部の標準的な宅地の1u当たりの価額」です。
ここで、「標準的」とは、対象不動産の属する地域(近隣地域といいます)において、例えば、1つの道路にのみ接面し(一方路)、地積が大きくも小さくもなく、形状はほぼ長方形または正方形で、平坦な土地をいいます。言い換えると、角地・地積が過大または過小・不整形・傾斜地など(これらの要因を個別的要因といい、ここに挙げたもの以外にもたくさんあります。個別的要因とは、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因です)の要因がなく、そのまま当該地域における代表的な価格であります。なお、この標準的な土地は、具体的な実在する画地を意味しているわけではなく、概念的な想定上の画地です。
しかし、現実には、土地は千差万別の個性があり、相続税路線価をベースとして、上記のような個別的要因を考慮することとなります。このような個別的要因の格差率については財産評価基本通達に定められていますが(補正率及び加算率といいます)、不動産鑑定士が日常の不動産鑑定評価において使用している個別的要因格差率とは大きく異なるものもあり、これが不動産鑑定評価による評価減にあたってのターゲットとなります。
A相続税路線価はいつの時点の価格か
相続税等の申告のために、国税庁が8月に発表していますが、その年の1月1日を価格時点(不動産の価格は何時の時点の価格を求めるかによって変動するため、その価格を決定すべき時点のことを価格時点といいます)とする価格で、その年の終わり(大晦日)まで、1年を通じて固定して使用されます。この年間固定というのは実務上の要請から必要であると説明されていますが、種々の問題を含んでいます(路線価の問題点については後述します)。
B相続税路線価の価格水準はどのように決められているか
相続税路線価は同じ地点・同じ時点の地価公示価格の8割をメドとして設定されます。
具体的には、例えば、○○市‐7(○○市の地価公示番号7番、住宅地)という公示地が、200,000円/uだったとします。すると、この公示地の前面道路の路線価はこれに80%を乗じて、160,000円/uと設定されます。地価公示価格というのは、地価公示法に基づいて不動産鑑定士が公示地の価格を鑑定評価して決定していますが、地価公示価格も1月1日時点の価格であるため、相続税路線価と同じ時点であり、その意味では整合性があります。
公示地が存在している道路の路線価については上記のとおりですが、全ての道路について公示地があるわけではありませんので、近隣のその他の道路については、公示地が存在している道路の路線価とのバランスによって決定していくことになります。
@相続税路線価の通年固定
相続税路線価は前述したとおり、その年の1月1日を価格時点とした価格です。しかし、現在のような地価下落局面のもとでは、相続発生時点においては、実質的には次のように路線価が下落していることになります。
相続税路線価×(1−時点修正率×月数/12)
この場合、時点修正率としては地価公示価格や都道府県地価調査の価格(基準地価格)の変動率を採用すれば説得力があると思います。
しかし、私の経験では、このように相続税路線価を時点修正した価格を、不動産鑑定評価において標準的画地の価格とすることは、税務署側の抵抗が大きいようです。
その理由としては、前述のとおり、「相続税路線価は公的な評価額(これも「時価」の1つです)である地価公示価格の8割をメドとして設定されており、従って、年率2割の地価下落までは耐えられるように、アローアンスにより安全性を確保してあるから」というものです。従って、「年率2割を超える地価下落率となった場合には対応するが、そうでない場合はあくまでも1月1日現在の路線価を採用する」と主張してきます。その背景として、やはり「課税の公平」を持ち出してきます。
しかし、例えば、大晦日に亡くなった方と、明けて元旦に亡くなった方とで、たった1日の違いで評価額が1割前後下がるとすれば、「課税の公平」と呼べるでしょうか?
通年固定には技術的な理由もあると説明されていますが、遺産分割等が整い、実際に売却する頃にはさらに下がっていることも勘案して、2割以内の下落率であっても時点修正をして救済するよう、税務当局の配慮が望まれます。
A地価公示価格の妥当性
地価公示価格は、バブル期においては実勢価格の上昇に上げ遅れ、その後の下落局面においては、下げ遅れているという遅行性があります。
また、例えば道路・空港建設等の公共事業が行われている地域においては、用地買収を円滑に進めるために、公示地価格・基準地価格が実勢よりも高止まりしているケースもあるようです。このような場合には、地価公示価格をベースにして決定されている相続税路線価も、妥当性を欠くこととなります。
B相続税路線価は地域要因を的確に反映しているか?
相続税路線価は、道路に敷設される、近隣地域の標準画地としての価格です。従って、近隣地域の代表として、その地域の地域要因を反映しているはずです。しかし、例えば、次のような問題点があります。
T.交通接近条件→鉄道駅との距離によって価格が異なるのに、100m以上にわたって
同一の路線価でよいか
U.街路条件→幅員・歩道の有無等を考慮しているか
V.環境条件→嫌悪施設の有無等を考慮しているか(例:隣地が墓地)。
W.行政的条件→前面道路幅員による実効容積率等を考慮しているか
X.道路方位→道路の南北両側に宅地がある場合、南側道路と北側道路では価格が異なるのが普通ですが、路線価はどちら側の価格なのか。
C不適切な路線価敷設の実例
私がこれまで経験した中で、明らかに不適切であった路線価として、次のようなものがありました。
T.行政的条件の無視
工業専用地域と準工業地域が隣接している場合に同一の路線価を敷設してある例です。
確かに、現地の環境条件はほぼ同等でしたが、工業専用地域においては住宅が建てられないという大きな制約があります。多様な用途の建築物が建築できる準工業地域と同じ価格というのは考えられません。
U.路線価の下げ忘れ
相続税路線価は地価公示価格の8割をメドとして設定されますので、単純には、地価公示価格の下落率とほぼ同じだけ、翌年には下落するはずです。しかし、例えば、前面道路にバス路線が開設され、バス停ができたなど、地域要因を良化させる事柄があれば、下がらなかったり、逆に上がることも合理的です。
しかし、そのような要因が全くなく、しかも周囲の路線価は下がっているのに、そこだけが下がっていない場合がありました。
以上のような不適切な路線価であっても、いったん公表され、印刷物やネット上のデータになってしまうと、それが堂々と1年間使用されてしまうわけです。このような場合には、路線価そのものの修正交渉もありうると思います。
また、不動産鑑定評価においても、取引事例からみて路線価そのものが高ければ、路線価を下回る標準画地の価格を算定することも可能です。
財産評価基本通達による評価であれ、不動産鑑定評価であれ、評価単位の設定如何によっては評価額が異なってきます。財産評価基本通達(土地関係10)では、宅地の評価単位は、「1画地の宅地(利用の単位となっている1画地の宅地)ごとに評価する。」と規定されており、1筆とは必ずしも一致しませんし、1筆の部分(例えば、1筆の土地の一部に借地権があって、残りが自用である場合)を評価対象とすることもあります。
ただし、相続等により取得した宅地については、各相続人が取得した宅地ごとに判定します。しかし、例外として、親族間等での宅地の分割が、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、著しく不合理な分割と認定されると、分割前の画地を評価単位とすることになります。
従って、既に建物等が存在して、一体利用しており土地を分割できない場合等以外は、うまく分割すれば評価減のチャンスがあります。この点が大きな誤解があるところです。借り入れをしてアパートを建てるなどの生前対策ばかりが相続対策ではありません。相続発生後でも、あきらめずに、いくらでも節税機会はあるのです。
不動産鑑定評価を利用すれば、あらゆる土地の評価が下がるというわけではありません。それでは、具体的には、不動産鑑定評価を利用した評価減には、どのような土地が向いているのでしょうか?
結論的には、原則として相続税路線価をたたくのは税務署側の抵抗が大きいので、路線価はあまり触れず、個別的要因が劣る土地について、個別的要因をたたくのが有効です。
個別的要因とは、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因ですから、その減価率や増価率はその対象不動産に特有のものです。概して、財産評価基本通達の減価率は緩すぎるため、価格が高くなり過ぎます。不動産鑑定士は財産評価基本通達に記載されている個別的要因格差率には拘束されず、個々に判断していきますが、実務的には土地価格比準表という格差率表が武器になります。
土地価格比準表は、旧国土庁(現国土交通省)が、国土利用計画法のもとでの土地取引監視に当たり、売買価格が適切か否かを審査するために使用しているものです。国税庁が課税目的で定めた財産評価基本通達と旧国土庁が適正な地価形成という目的で定めた土地価格比準表とでは、同じように国の機関が定めたものでありながら、格差率が異なるのは奇異なことですし、適正な地価形成という純粋な目的で定めた土地価格比準表のほうが実態に即していると思います。
@袋地
袋地は不整形地の一種で、細長い路地状部分によってのみ道路に接面しているため、標準画地に比べて次のような減価要因があります。
a.細長い路地状部分の有効利用度が劣ることによる減価
b.有効宅地部分が直接には道路に接面していないことにより、利便性・快適性・収益
性等が劣ることによる減価
c.建築基準法等により建築可能な建物が制限されることによる減価
(1)税法の評価方法
税法では、
T.不整形地補正率(想定整形地及び蔭地割合)による方法
U.間口狭小補正率及び奥行長大補正率を適用する方法
を選択適用して評価します。
不整形地補正率を適用する場合、不整形の度合(利用効率の低下度)が異なるのに、蔭地割合が同一であれば同一の評価額になるという不合理があります。
また、間口狭小補正率も「間口4m未満」を一律の減価率としています。2m未満であれば、建築基準法上の接道義務を満たせないため、建物を建築することができず、実質的には無道路地に準ずることになるため、この扱いは不合理です。
付表6 間口狭小補正率表(昭45直資3−13・平3課評2−4外改正)
|
地区区分 |
ビル街地区 |
高度商業地区 |
繁華街地区 |
普通商業・ |
普通住宅 |
中小工場地区 |
|
4未満 |
0.80 |
0.85 |
0.90 |
0.90 |
0.90 |
0.80 |
|
4以上 6未満 |
0.85 |
0.94 |
1.00 |
0.97 |
0.94 |
0.85 |
|
6 〃 8 〃 |
0.90 |
0.97 |
1.00 |
0.97 |
0.90 |
|
|
8 〃 10 〃 |
0.95 |
1.00 |
1.00 |
0.95 |
||
|
10 〃 16 〃 |
0.97 |
1.00 |
||||
|
16 〃 24 〃 |
0.99 |
|||||
|
24 〃 |
1.00 |
(2)鑑定評価による評価方法
路地状部分と有効宅地部分に分けて、路地状部分の減価率と有効宅地部分の減価率を各部分の面積により加重平均して、袋地による減価率を査定します。
路地状部分(例、約135u)、有効宅地部分(同1691u)により、路地状部分の減価率(例▲50%)、有効宅地部分の減価率を(同▲20%)を加重平均して、袋地による減価率を次の通り査定。
(▲50%×135u+▲20%×1691u)÷1826u≒▲22%
なお、間口が2m未満であれば、建物を建築できないため、次の無道路地に準じて評価します。
A無道路地
(1)税法の評価方法
税法では、無道路地と通路相当部分から構成される想定上の不整形地としての価額を求め、その価額から通路相当部分の価額(想定上の不整形地としての価額の40%を上限)を控除して求めます。
(2)鑑定評価による評価方法
a.現実の利用に最も適した道路等に至る距離等の状況を考慮した最適な取付道路を想
定し、取付道路を取得した後に形成される「想定上の袋地」の価格を査定します。
b.想定上の袋地の価格から、取付道路の取得費用を控除して、対象不動産の価格を査
定します。
c.税法では「通路開設部分」と呼ぶ「取付道路」についての考え方は次のとおりです。
まず、幅員について、建築基準法で要求される2mのみでよいのでしょうか。開発行為を伴う場合には、条例や開発指導要綱等により6mが要求されることが多いです。
次に、対象不動産に必要な取付道路は、もしも買収できなければ建築は不可能であり、売主側がかなり強気の価格交渉に出ることが予想されます。買主が必要とする部分を売却することが、売主側にとって不合理分割に相当する場合には、なおさらです。
また、対象不動産から見れば、取付道路を取得できれば、建築できない宅地が建築可能な宅地に一変し、市場価値が急激に増大します。従って、取付道路部分については、対象不動産に併合の利益が生じ、第三者を対象とする取引において成立するであろう価格(正常価格)から乖離して、市場が限定され、取付道路部分を割高(いわゆる限定価格的)に取得せざるをえないこととなります。
従って、取得不能の危険性等も勘案して、正常価格の2倍(または3倍)程度の価格で取得せざるをえないこととなります。
以上から、取付道路の取得費用を次の通り査定します。
標準画地価格 地積 倍率 取付道路の取得費用
(例)97,000円×126u×2≒24,444,000円
さらに、対象不動産について想定した袋地価格から、取付道路の取得費用を控除して、対象不動産の鑑定評価額を次の通り求めます。
想定上の袋地の価格 取付道路の取得費用 鑑定評価額
49,105,000円−24,444,000円=24,661,000円
税法では、無道路地から公路に通じるにあたり、「実際に利用している路線・・」といっていますが、「当該宅地の利用上、最も合理的な路線」とすべきです。
なお、無道路地の減価率は市場の実勢では▲70〜80%といわれておりますので、税法による評価額では、まず売却できません。
Bセットバック
建築基準法第42条第2項にいういわゆる2項道路では、道路中心線から2m後退した線が道路の境界線と見なされます。その結果、セットバックを要する部分については、自分の宅地でありながら、道路として扱われ、建蔽率・容積率の算定に当たっても、敷地面積に算入できません。
(1)税法の評価方法
セットバック部分について、30%減を上限とします。
(2)鑑定評価による評価方法
道路部分として処理し、ゼロ評価(100%減価)とします。
C崖地
一般に、崖地とは、「土地が傾斜しているため、有効利用の程度が阻害され、その阻害の程度が一定限度を超えており、平坦地に比して有効利用度が質的に異なる土地」と定義されます。即ち、傾斜が大きくなるほど崖地そのものの有効利用度は小さくなり、傾斜が一定限度を超えたとき、有効利用度は激減します。
その「一定限度」は、崖地それ自体が通常の方法により利用可能か否かによって区分され、土地価格比準表によれば、概ね15度の傾斜を目安としています。対象不動産が有する崖地部分の平均傾斜は(例)約35度であるので、利用不能な崖地に分類されます。
(1)税法の評価方法
崖地等で通常の用途に供することができないと認められる部分を有する場合→崖地補正率表によります。傾斜の明示はなく、崖地部分が上り傾斜か下り傾斜かの区別もありません。
付表8 がけ地補正率表(平3課評2−4外・平11課評2−12外改正)
|
がけ地の方位
|
南 |
東 |
西 |
北 |
|||
|
0.10以上 |
0.96 |
0.95 |
0.94 |
0.93 |
|||
|
0.20 〃 |
0.92 |
0.91 |
0.90 |
0.88 |
|||
|
0.30 〃 |
0.88 |
0.87 |
0.86 |
0.83 |
|||
|
0.40 〃 |
0.85 |
0.84 |
0.82 |
0.78 |
|||
|
0.50 〃 |
0.82 |
0.81 |
0.78 |
0.73 |
|||
|
0.60 〃 |
0.79 |
0.77 |
0.74 |
0.68 |
|||
|
0.70 〃 |
0.76 |
0.74 |
0.70 |
0.63 |
|||
|
0.80 〃 |
0.73 |
0.70 |
0.66 |
0.58 |
|||
|
0.90 〃 |
0.70 |
0.65 |
0.60 |
0.53 |
(2)鑑定評価による評価方法
土地価格比準表等を参考として、対象不動産が崖地を含むことによる減価率を以下の通り査定します。
a.崖地部分と平坦地部分との関係位置及び関係方位
関係位置とは、対象不動産に含まれる崖地が、対象不動産の内部において下り崖地なのか上り崖地なのかを意味し、下り崖地であれば平坦地部分に及ぼす効用(崖地があることにより、平坦地部分について日照・通風・眺望等の確保や隣棟間隔の維持などの価値増が生ずるので、崖地そのものは利用不能であっても、平坦地部分の価値増を崖地に還元して評価すれば、相応の価値が生ずる)が認められますが、上り崖地であれば平坦地部分に及ぼす効用が小さいため、下り崖地の場合に比べて、減価は大きくなります。
また、関係方位とは、崖地が対象不動産の東西南北いずれの方位に存在しているかということであり、当然、南・東・西・北の順に減価が大きくなります。
対象不動産は北側下り崖地であり、関係位置及び関係方位に基づく格差率を、(例)20%(=減価率80%)と査定します。
b.崖地の傾斜の状況
対象不動産が有する崖地の傾斜は平均約35度であり、現状のままでは庭としての利用もほとんど不可能と判断されます。従って、崖地の傾斜の状況による格差率を(例)70%(=減価率30%)と査定します。
c.崖地格差率
以上から、関係位置及び関係方位に基づく格差率に崖地の傾斜の状況による格差率を乗じて、崖地格差率及び崖地減価率を次の通り求めます。
20%×70%=14%(崖地減価率=100%−14%=86%)
d.崖地を含むことによる減価率
対象不動産は、崖地部分が(例)約800uと判断されます。従って、上記の崖地減価率に、対象不動産全体の面積に崖地部分の面積が占める割合を乗じて、崖地を含むことによる減価率を次の通り査定します。
86%×800u/2437.29u≒▲28%
D面大地
(1)税法の評価方法(平成16年に大きく改正されました)
(改正前)
税法では、広大地減価があるのみで、他は奥行価格補正率などによらざるをえません。
広大地とは、「地域における標準的な土地の地積に比して著しく地積が広大な土地で、都市計画法に規定する開発行為を行う場合には、公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」をいいます。
広大地についての補正率は、奥行価格補正率に代えて、次を適用します。
補正率=(広大地地積−公共公益的施設用地の地積)/広大地地積
つまり、道路・公園・教育施設等の潰地を控除した有効宅地率ですが、開発行為に付き物のデベロッパーの利益やリスクという要因が考慮されていないことが不合理です。
(改正後。平成16年6月4日改正)
(広大地の評価)
|
24 |
−4 その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条((定義))第12項に規定する開発行為(以下本項において「開発行為」という。)を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(22−2((大規模工場用地))に定める大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるものをいう。)を除く。以下「広大地」という。)の価額は、原則として、次に掲げる区分に従い、それぞれ次により計算した金額によって評価する。(平6課評2−2外追加、平11課評2−12外・平12課評2−4外・平16課評2−7外改正)
|